腐女子こそ夢小説を書くべき論

※これは夢小説という手法を使ってBLを表現することの可能性を論じた記事です。

腐女子に向けて「夢小説という表現技法の選択肢の提示」をしています。

※記事内では夢小説について広義の定義をしています。夢小説の定義は様々で、押し付けの意図はありません。

 

「夢小説ってキャラ×自分なんでしょう」「わたしは夢小説に自己投影しないし」「昔は好きだったけど、もう夢は卒業して腐女子だよwwwえ、まだ夢好きなの?www」
「というか、男女の恋愛よりBLが好きな私に夢小説なんて関係ないから」

なんて他人事だと思っている、そこの腐女子。なんて勿体ない……夢小説という技法を使って表現されるBLを知らないなんて、非常に勿体ないですよ!

この記事は、腐女子と夢者の混合であり、「夢小説でBLを表現する」二次創作者のわたしによる、「もっと夢小説もBLも読みたい!」っという願いを叶えるための布教活動です。
腐女子~~夢小説書こうぜ~~!

 


◎そもそも夢小説って何?

夢小説を読んだことがない、昔読んでいたけど「卒業」したという、現在夢小説に興味がない人が言う夢小説というものは、多くの場合「キャラ×自分の恋愛」「無個性女主人公の名前を自分の名前に変えて楽しむもの」とされているようです。

その認識は間違っていないのですが、ものすごく狭い認識だと言わざるを得ません。

「BLはシュッとしたイケメンと女の子みたいな美少年の恋愛だ」と言ってしまうくらい狭いんです。腐女子に向かってそんなことを言えば「そういうのもあるけどそれだけじゃないよ!」と言うでしょう。「夢小説はキャラ×自分の自己投影恋愛小説だ」というのは、それくらい強引なのです。そういうのもあるけどそれだけじゃないよ!

じゃあ夢小説の定義ってどんなものなの?と聞かれれば、「人それぞれ」であるとしか言えません。
先程出した、外から見た夢小説の認識で重要となる要素も、実際に存在する夢小説に照らすと下のようなことになります。

  • 恋愛……してもしなくてもいい
  • 自己投影……してもしなくてもいい
  • 名前変換……してもしなくてもいい

なんじゃそりゃ、ガバガバじゃないか、と思われるでしょう。書き出してみてわたしも思いました。
しかも「恋愛」については、男×女である必要は全くない。女×男もアリ、百合もアリ、BLもアリなのです。しかしこの定義の曖昧さこそが夢小説の受け皿の広さであり、懐の深さなのです。
ここでは便宜上「原作にいないキャラクターを書き手が投入し、原作世界と何らかの関わりを持たせる二次創作」を夢小説とします。あくまでわたしの考えであり、すべての夢小説好きがこう考えているわけではありません。というか、夢小説を定義することとか無理。


腐女子と夢小説がどう関係するのか?

ここまでに述べた夢小説の多様性をふまえると、原作にいない人間を原作世界や原作キャラとの関係性にぶっこんでおけばそれでもう夢小説として成立してしまうのです。
腐女子モブ攻めって人気ですよね。醜いモブおじさんもいれば、顔のない不特定多数としてのモブもいますよね。
でもそれ、夢界隈から見たら夢小説なんです。(モブおじさんを夢主人公とするかは認識が分かれるところですが、限りなく広義の夢小説であるとはおもいます。

ここで夢界隈をよく知らない方は「モブ攻めって、モブは男だろう。夢小説は女が主人公なんじゃないのか」と疑問に思うでしょう。なんと、夢小説は主人公の性別はなんでもいいんですよ!女でも男でも、無性でも両性でも、そもそも人間じゃなくても!猫主人公とかよく見る!これでモブ攻めを夢小説的だと思う感覚が少しでも伝わったでしょうか。

ここまで話すと「モブが関わる話が夢小説って言われても、それなら今まで通りモブでいいじゃん。わざわざ夢小説書く必要ないじゃん」と思われるかもしれません。けれども、モブがモブから夢主人公になれば、モブでは獲得できなかったオリキャラとしての設定を獲得できるんです。それは名前や、見た目や、立場や、過去……モブよりも一人のキャラクターとして立てることができます。キャラの家族でも、魔性の美少年でも、暗い過去を持った寡夫のオッサンでも……

さらに、夢主さえ居れば何を描いてもOKみたいなとこあります。個人の好みはさておき、とてつもなく自由です。キャラと絡まずに、原作世界観に夢主ぶっこんだだけの「世界夢」とかあるんです。最近話題になりましたね、「#シンゴジ実況」。あれは自分が映画の世界の一人と仮定したごっこあそびですが、そういうのも夢界隈から見ればめちゃくちゃ夢小説です。世界夢です。

夢小説ってすごく自由度が高い二次創作なんですよ。キャラくんとわたしでイチャイチャする妄想だけじゃないんです(もちろんそういうのもアリですが)。

そんな自由度高すぎな夢小説界隈から、腐女子の方々に是非とも、是非ともオススメしたい夢小説表現があります。「BLCP観測型夢小説」「男主人公夢小説」です。


◎BLCP観測型夢小説

これはわたしが勝手にそう呼んでいるだけなのですが、夢主がBLCPを横から眺めている夢小説のことです。いわゆる「女子BL」です。BLを女の子が眺める、最近流行りのアレ。学生キャラ同士のBLCPを、同級生の女の子が眺めているような話が(わたしの見る限り)多いでしょうか。

腐女子がたまに言う「クラスメイトになってBLCP眺めていたい」の受け皿はここです。ここの夢小説にあります。

眺める女性を腐女子にして、自分の代弁者として推しBLCPを解説したり、彼らに新たな展開をもたらしたりするのだってアリ。というかわたしが読みたいのでください。

「女子BL」については同名の商業アンソロジーが出版されています。

libre-inc.co.jp

この「女子BLアンソロジーがいかに夢小説か」という視点については、フォロワーさんが記事を書いていたのでよければこちらもどうぞ。

wakudeki.hatenablog.com

ただし、わたしがこの形式の夢小説を「女子BL」と呼ばないのは、BLCPを観測するのは女子でなくてもよいから、です。
たとえばBLCP周辺の男性夢主によって。クラスメイトの男の子や年上のおじさん、小悪魔ショタなどなんでもありです。夢主がCPの片方に恋心を抱いていてもいいですね。BLが増えます。
またたとえば人間じゃないもの。BLCPの飼ってる(かもしれない)ペット、大切にしている鉢植え、はたまた壁。腐女子、よく「壁になって推しCPのセックス眺めてる」って言うじゃないですか。それ、夢小説ですよ、夢小説。

BLCP傍観型の二次創作、最近流行ってますよね。それって夢小説的でもあるんです。
ピクシブに投稿するとき、「夢小説」って一言入れてくれたら、「とにかくなんでもいいから夢小説が読みたい」っていう層にも読者が広がりますよ。いるんですよそういう奇特な人って。夢小説に飢えている人が。

 

◎男主人公夢小説

これはわかりやすいですね。主人公が男性の夢小説です。
夢小説の主人公は、女性だけでないという話は先ほどからしてきましたが、特にこの男主人公夢小説は腐女子と相性が良いのです。わたしのホームグラウンドはここです。

何故腐女子と男主人公夢は相性がいいのか。夢主人公と男キャラでBLができるからです!(※男主人公と女キャラの夢小説もありますがここでは触れません)

「BLなら原作キャラ同士でやれば十分。わざわざオリキャラと絡ませる必要なんてない」と思う方、多いでしょう。

けれども、原作にない立場、属性を持った男キャラを使ったBLを表現したい場合はどうしたらよいでしょうか?
例えばショタキャラが好きだけどハマったジャンルにはショタはいない。それでもこの原作世界で動くショタが見たい、ショタと関わる原作キャラが見たいとき……原作キャラを安易にショタ化すれば「キャラ崩壊」と言われかねません。

また、原作の男キャラAとBのBLにはしっくりこないけど、男に抱かれる/男を抱くA単体は見たいというとき。もしくは原作キャラAのことが受けとして大好きだけど攻めキャラのことはそれほどでもない…というとき。受けキャラのことを愛しすぎて攻めが蔑ろになっているBLCPが「攻めの棒化」と揶揄されていることもありますよね(受けの場合は「穴化」)。

しかし夢小説ならば、「萌えに従ったせいで起きたキャラ崩壊」も「キャラ単体を愛するゆえの攻めの棒化」も解決することができます!
夢小説は自分の好みの属性、原作に介入させたい立場を夢主人公という素体に好き勝手盛っていくことができるのです。原作にショタがいないなら自分の理想のショタを作ってぶっこめばいいし、原作に受けちゃんを抱いてくれそうな攻めキャラがいないのなら理想の攻め夢主を作って受けちゃんを抱かせればいいのです。

夢小説という手段を知れば、二次創作においてBLを表現する時の創作の幅がぐっと広がります。無理矢理キャラに役割を当てはめるだけじゃなく、原作にいない夢主人公という立場を利用するという選択肢があることを知ってほしいです。

さらに男主人公夢小説は、作中で肉体関係について言及されない限り、恋愛関係にある男性同士の受け攻めを決めなくても大丈夫というところも個人的に魅力です。勿論エロ描写がある場合、キャラと男主人公の間で肉体関係があることを示唆する場合などは男主人公の受け/攻めを表記しないと悲劇が起こります。けれどもあくまでプラトニックなカップルの場合や、いつかセックスするかもしれないけど今はセックスしてないカップル、エロの絡まないネタのときに受け攻めを決めなくていいのです。
例えるなら、挿入エロ描写のない商業BL漫画でしょうか。挿入までのエロがない商業BL漫画って、受け攻め明記してないの多いですよね。
BLCPはCPという特性上、二人の名前を並べて表記した時点でどんなにプラトニックな関係だったとしても「もしセックスするならどちらが挿入するか」を考えなければなりません。しかし、夢小説なら、それをしなくていいので、心安らか!!!

いまご自分のされている萌えの表現方法に微妙に違和感を持っている方、新しい二次創作BL表現を模索したい方、男主人公夢小説という選択肢を試してみてはいかがでしょうか。夢小説すごい、なんでもできる。BLエロもあるよ。

 

◎夢小説ってどこにあるの

よく腐女子の方に言われます。「夢小説ってどこで読むの?」「そもそも夢小説ってまだ存在するの?」

わかる……夢小説って興味がないと「見えない」んですよね……。夢小説界隈って、昔からの個人サイト検索避け文化が未だに根付いているので、本当に、ちょろっと検索しただけじゃ見つかりにくいんですよ。そして、見つかりにくい場所にある夢小説のほうが、マニアックで、いろんな可能性を秘めていて、萌えのツボにギュンと来ることのほうが多い……。

夢小説が一番多いのは個人サイトです。多くの夢小説は未だに個人サイトにて発表されています。わたしもサイト運営してます。
夢小説サイトの探し方を教えてしまうと、わたしが夢小説界隈から殴られ叱られてしまうので、個人サイトは「頑張って探してみてください!」としか言えません。

けれども夢小説、特に腐女子向けの夢小説がお手軽に読めるSNSがあるんです。それがpictblandです!

pictbland.net

このpictblandというSNSは、BL作品に特化しており、完全に腐女子向けです。ですがこのpictpland、夢小説用の名前変換機能があるんです!

上の方で「夢小説において名前変換はしてもしなくてもいい」と述べましたが、夢主人公の名前変換機能があるということは、その作品が夢小説であると示す一番わかりやすい手段です。そしてこのpictblandは、名前変換可能な男主人公夢小説の投稿ができるのです。
pictblandにログインし、「夢小説」でタグ検索をします。すると、すごい!!男主人公夢小説が!!いっぱい出てくる!!!
男主人公夢小説ってどんなものかな?と興味持ってくださった方には、是非pictblandで検索していただきたいです。ピクシブより絶対見つけやすい読みやすい。

ちなみにBLCP観測型夢小説は、女性主人公が視点であることが多いという点でpictblandで探すのは困難かと思われます。ピクシブの方がBLCP観測型夢小説(的な文法の作品)はあります。モブ介入とか、モブがCPの当て馬にされてるやつとかですね。ピクシブで見つけたら「これがBLCP観測型夢小説か……」と思って読んでみてもらえたら嬉しいです。

※11/27 追記
夢小説がどれだけ自由で多様な表現かを示すための、様々な夢小説を紹介する記事をつくりました。いわゆる「夢小説」らしい夢小説から、BLエロ夢小説まで。以下の記事より読めます。

makun0uch1.hatenablog.com

 

腐女子、夢小説を書こう

我々オタクは二次創作をしようとするとき、漫画や小説など、表現したいものに適した方法を選びます。夢小説は漫画や小説などと並んだ、二次創作表現手法の選択肢であるとわたしは考えています。

二次創作でBLを表現したいとき、夢小説という選択肢があることを思い出してくれたら嬉しいです。
ついでにお願いすると、ご自分の二次創作物について「これ夢っぽいかも」って思ったら、ほんの隅っこにでも夢小説の文字を入れてくれると嬉しいです。繰り返しになりますが、ピクシブだったら夢小説タグつけたり。そうすると、腐だけじゃなくて夢者も読者として取り込めますよ。そしてどんな夢小説でもいいから観測しておきたい奇特な夢小説好きは涙を流して喜びます。

ちなみに夢小説って言ってるけど、漫画やイラストでも夢創作はできますよ!夢創作たのしい!!なんでもできる!!自己解釈の表現の幅が広がる!!レッツトライ!!

 

 

【おまけ】なぜこの記事を書いたか

理由一つ目は、夢と腐は共存するということを示したかったから。
夢と腐って何故だか対立するものとして語られることが多くて、対立しないよ、共存してるよ、共存できるよということを主張したいのです。というか、夢と腐を相容れないもののように語られてしまうと、男性夢主とキャラのBLを主軸に二次創作をしているわたしの行き場がなくなってしまうので。夢界隈でBL書いて生きてる人間は、見えにくいけれどいるんです。

理由二つ目は、夢小説は侮蔑されるものじゃないと主張したかったから。
現役で夢小説に触れている人以外が言う「夢小説」は、幼稚で拙いものという蔑みや見下しのニュアンスが含まれているように常々感じています。「これ夢小説っぽい」「夢小説みたい」って言うとき、無意識に馬鹿にしていませんか。
夢小説を書いている人間としては、「夢」を悪口の言葉として使われるのはたまったものじゃありません。夢小説は、ただの二次創作の手法であり、スティグマ的に扱われるものではないと、わたしは主張していきます。

参考までに、現役夢者の方が書かれた記事を貼っておきます。

ohutonmogmog.hatenablog.com